Please Call me...




『千艸』

 そう名を呼ぶお前の声が心地良くて、名を呼ばれることをうれしく思う。
 その声が聞きたくて、名を呼んで欲しくて、俺はお前の名前を呼ぶ。

『羅貫』

 そうすれば、お前は俺を呼んでくれる。

『千艸』

 名を呼ばれる度に心が温かくなる。
 そう言えば、名前を呼ばれるのは久しぶりだ。
 羅貫に会うまでは、“千銀せんろう”とか、しまいには“化物”とか言われていた。そして、俺自身それが当たり前だと思っていた。
 だって、俺は化物だ。撃たれても、矢を射られても死にはしない。
 だから、恐怖や嫌悪の混じった声以外でこの名を呼ばれたことなどほとんどなかった。
 でも、お前は呼んでくれる。親しみを、優しさを込めて、俺の名を…。
 死なぬ俺を案じて、叫んでくれる。
 それがとてつもなく幸福に感じる。
 それゆえにお前を愛しく思う。

 だから、誓おう――お前を守る、と。

 俺に幸せをくれるお前をいろんなものから守ろう。
 身体だけでなく、その優しき心がそのままでいられる様に。

 そして、呼んでくれ。


 その声で、その心で、俺の名を―――。