うたかたうつせみ




 世界が終わる瞬間を、知っている。
 そんなの酷く簡単で、至極単純なこと。
 想像すら必要としないほど、本当に。
 あなたがいなくなること。
 それだけで、俺にとってのこの世界は簡単に終わってしまうのだということ。
 それだけのものだということ。

 分かっていますか?



「見つけた」

 草叢の中。
 淋しそうに丸まった金色の毛並みを、両手で掬い上げる。
 驚いたように瞠られるまるい瞳に笑みを向けて。
「セファ…」
 名を呼ぶ声が、頼りなく揺れる。
 けれどそれだけで。
 その声だけで。
 この世界が確かなものになる感覚。

 ねぇ、お頭。
 あなたがいなくなるということ。

 それだけで。

 揺らぎ崩れて壊れてしまう世界があることを、あなたは知っていますか?