確認の言葉




 そんな顔で口にされる「貴方を愛している」という言葉は、いつも空々しく聞こえて。
 無性に殴りたくなってくる。





******





 暖かい日差しの差し込むソファに身を委ねてしばしまどろんでいると、隣りに慣れ親しんだ気配がして目を薄く開く。
「…荘?」
「信乃?起きたんですか?」
 名を呼べば、直ぐに返事が返ってくる。
 それは信乃に大きな安心感をもたらすのだが…。
「なぁ、荘介。俺のこと好きか?」
「何ですか、いきなり」
 怪訝そうな顔をこちらに向けてくる青年に理由を言わず、さらに畳み掛けると「好きですよ」と素っ気なく答えてくる。
「じゃあ、愛してるか?」
「…信乃、本当にどうしたんですか?」
「いや、何となく聞きたくなって…」
 その言い分に荘介が仕方ないと溜め息を吐く。
「貴方を愛してますよ」
 自分が口にしたら砂を吐きそうな台詞を堂々と恥ずかしげもなく言った相手の顔を見て、信乃はギュッと拳を握った。
 ――ああ、まただ…。
「…荘」
「何ですか?」
「いや、何でもない」
 信乃は立ち上がり、不思議そうな顔をした荘介をソファに残しその場を離れる。
 きっとお前は知らない。
 そう言った時のお前の表情がどんなのかを。
 俺を愛していると言いながら、俺を見ずに何処か遠くを見つめている。
 そんなお前を見ると、未だに死にたがっている様で――。
 握った手にさらに力が入る。
 噛み締めた歯がギリッと鳴った。


 そのムカつく面を殴ってこちらを向かせて。
 お前の目に俺を――俺だけを見せて。
 生きる事だけをきっと選ばせてやる――。