花氷




「あの、これ、貰ってくれませんか?」
 顔を真っ赤にした可愛い女の子が、手に持っていた物を央生に差し出す。綺麗にラッピングされたプレゼント。この時季だし、きっと中身は手編みのマフラーか何かだろう。
 思いの込められたプレゼント。
 出来れば受け取って上げたいのだが――。
「…ごめん。悪いけど、俺は受け取れない」
 言った瞬間、彼女の顔が歪む。泣いてしまうかも知れない。
 だが、彼女は泣かなかった。
 キュッと唇を噛み、何とか笑おうとし、小さな声で「来て下さって…ありがとうございました…」と言って走り去っていった。
 きっと彼女は見えない所で泣くのだろう。
 ごめんね、折角、勇気を振り絞って、言ってくれたのに。俺には応える事が出来ない。
 だって、俺は――。

「真柴…」

 背後から呼び掛けられる。
 振り返れば、今思い描いていた人がそこにいた。

「…真也」

 きっと今の自分は情けない顔をしている。
 心配そうに真也が側へ来る。
「真柴、大丈夫か?」
 優しく手を差し伸べてくる真也を央生はそっと腕に抱き締める。
「真柴…?」
 央生の行動を不思議に思いながらも、真也は逃げなかった。
 きっと、自分が弱っているからだ。
 本当はしたくもない事をやってしまって、罪悪感に駆られているからだ。
 ごめんね、可愛い女の子。俺は君を傷付けた。君の思いを簡単な言葉で断った。
 それでも、俺は嘘は言えない。
 自分の心に嘘は吐けない。
「…大丈夫だ、真柴」
 子供をあやすように真也が背をポンポンと叩く。
 泣きそうになって、温かい身体を少し強く抱き締めると、そっと抱き締め返してくれた。


 知っている。
 叶う筈が無いと。
 応えてくれる筈が無いと。
 それでも、この思いを止める事など出来ないから――。
 ただ、強く君を思う。


 ――…大好きだよ、真也。