口当たりの良い砂糖菓子のような日々ではなかったのにもかかわらず。




「なあ真也ー」
「?御来訪寺なら遅れてくるぞ?」
「うん。や、そうでなく。挨拶とか、いーの?」
「誰にだ?」
「家族とか、家の人に。いつもお前のトコに長居してるし」
「……平気だ。どちらにしろ、いない」
「え。あー…悪い……」
「いや…。大して不自由していないし」
「……あのさ。聞いてもいい?」
「何だ?」
「昔から、家の人いなかったのか?」
「……昔は、母親がいたし、父親も…今よりは頻繁に家にいた」
「そっか」
「厳しい人たちだったことくらいしか、覚えてないけれど」
「でも、覚えてるんだな」
「そう、だな。…忘れない」

拍手御礼ss再録.title by Einsame Rose(閉鎖)