続く言葉波の音が響く浜辺に広がる暗闇を切り裂くように待ち侘びていた声が聞こえる。 「あ、いたいた」 そう言って駆け寄ってくる友人に西脇は悪態をつく。 「遅いぞ、宇崎。言い出しっぺが最後ってどういう事だ」 「ごめん、ごめん」 「ホント。こっちは早く来て、寒い思いしてるって言うのに…」 軽く身体を震わせて、一番最初に着いてしまったクロウも宇崎に文句を言う。 みんなで初日の出を見ようと言って、この浜辺を決めた本人が遅刻とは、文句の一つも言いたくなる。 「だから、ごめんって言ってるだろう」 二人に責められて、宇崎は参ったと言う顔をする。 「それより、西脇…」 謝っていた宇崎が西脇を不審な目で見る。 「何で、そんな事してんのさ」 宇崎が西脇を――否、西脇の胸元を指す。 「何って、暖をとってる」 しれっと答えた西脇の腕の中には、困った様な、半ば諦めた様な複雑な表情をした石川がいた。 「やぁ…宇崎」 軽く手を挙げて、挨拶をする石川の顔は少し赤い。 それが、寒さの為か、恥ずかしさの為かは判断できない。 「まったく、そんな事しなきゃなんなくなるなら、もう少し厚着して来いよ」 「…これで十分だと思ったんだよ」 だが、来てみると冬の海は思った以上に寒かったのだ。寒さに弱い西脇が耐えれる筈がない。 「それくらいでいいじゃないか、宇崎。俺も寒かったから丁度いい」 「……もう、石川は優しいんだから」 呆れた様子で宇崎は、カップルにしか見えない二人から海の方へと視線を移す。 すると、少しずつ海がキラキラと光りだす。 「お、そろそろお出ましか」 クロウが白い息を吐きながら言う。 光が闇を貫いていく。待ち侘びた太陽が海から顔を出す。 「……初日の出だ」 「綺麗だな…」 空と海一杯に日の光が溢れる。 新しい年の始まり。 四人は互いに顔を見合わせ、笑顔で挨拶を交わす。 明けましておめでとう。今年も、これからもよろしく―――。 |