知らない二人




 …見られてる。

 石川は隣りにいる男に気付かれない様に溜め息を付いた。
 気が付けば、誰かの視線がこちらに向けられている。記憶を逆上れば、確かこの男――西脇と共に行動してからだった様に思う。
 どこから見られているのかとそっと目を向ければ、そこには女子高生のグループがいた。何やらキャッキャッと顔を赤らめながら友達とお喋りをしている。
 それを見て、なるほど、と納得してしまった。
 何故なら、隣りに立つ西脇は男の自分から見ても格好良いと思うからだ。背も高く、バランスのとれた身体と、端正な顔立ち。切れ長の目は、すべてを見通しているように深く澄んでいる。
 そんな男を女性達が放っておく訳がない。


 勝手に解釈してしまった石川の隣りで西脇もまた溜め息を付いていた。



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 …やっぱり、注目されているな。

 そう思ってちらりと視線をやるのは隣りの青年。
 会った当初から人目を引いていた石川は、西脇と一緒に行動する様になってから、さらに注目を集める様になった。
 何故そうなったかを西脇は知っている。西脇との喧嘩を切っ掛けに石川はよく笑う様になったのだ。そして、西脇はそれを意図して喧嘩を吹っ掛た。
 だから、この結果は喜んで良いはずなのだが…ちょっと、効果がありすぎた様だ。
(まさか、ここまで威力があるとはなぁ〜。さすが天然の魔性、恐るべし)
 さり気なく石川をガードして歩くのが最近のクセになりつつある西脇は、そんなことを考えながらも周囲への注意を怠らなかった。



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 結局、2人は自分も注目されてるなんてことに最後まで気付かなかった――。