戻れぬ孤独ひとりが怖くなったのは… 西脇も宇崎もクロウも、皆、用事がある様で。 一人ポツンと石川は屋上にいた。 買ってきた昼食をちびちびと口に運ぶ。 「――…静か、だな」 他に何も音のしない空間で、その声は嫌に大きく響いた。 以前は好き好んでいた静けさも、今では心を冷やすばかりだ。 冷えていくのを防ぐかの様に膝を寄せ、そこに頭を乗せた。 「…早く、誰か来ないかな」 そう呟く自分は、親を待つ子供の様で。 少し、笑えた。 強くならなきゃと、この学校に来た筈なのに。今の自分はどうだろう。少し一人になっ ただけなのに、こんなに寂しいなんて。何だか、逆に弱くなってしまった様に感じる。 ――…もう、俺はあいつらがいなきゃ駄目なんだな。 ひとりではもういられないと心が叫ぶ。 その叫びを漏らさない様に、一層自分の体を抱き込んだ。 一体どれ位そうしていただろう。 「石川?どうかしたのか?」 頭上から慣れ親しんだ温かい声が掛けられ、ポンッと頭に手が乗せられる。 驚いて見上げた先に西脇の顔があった。 どうやら、自分の考えに没頭していて、彼が来た事に気付かなかった様だ。 「石川?」 唯ジッと見ていたからだろうか、西脇が心配そうに顔を歪める。 「あ、ああ。ゴメン…ちょっと驚いて」 やっと声を発した石川に安心したのだろう。西脇が優しく頭を撫でた。 「悪い、遅くなった。宇崎達ももう直ぐ来るから」 「うん」 どうやら西脇には全てお見通しの様だ。やはりこいつには敵わない。 優しい声と心地良い感触に身を任す。 冷えた心が元に戻るまで――。 何時からだろう ひとりが怖くなったのは ――ひとりが怖い事を知ってしまったのは 知らなかった時にはもう戻れない だから 俺はもう お前を 皆を 手放す事など出来はしない…―― |