戻れぬ孤独




何時からだろう

ひとりが怖くなったのは…





******





 西脇も宇崎もクロウも、皆、用事がある様で。
 一人ポツンと石川は屋上にいた。
 買ってきた昼食をちびちびと口に運ぶ。
「――…静か、だな」
 他に何も音のしない空間で、その声は嫌に大きく響いた。
 以前は好き好んでいた静けさも、今では心を冷やすばかりだ。
 冷えていくのを防ぐかの様に膝を寄せ、そこに頭を乗せた。
「…早く、誰か来ないかな」
 そう呟く自分は、親を待つ子供の様で。
 少し、笑えた。
 強くならなきゃと、この学校に来た筈なのに。今の自分はどうだろう。少し一人になっ
ただけなのに、こんなに寂しいなんて。何だか、逆に弱くなってしまった様に感じる。

 ――…もう、俺はあいつらがいなきゃ駄目なんだな。

 ひとりではもういられないと心が叫ぶ。
 その叫びを漏らさない様に、一層自分の体を抱き込んだ。





******





 一体どれ位そうしていただろう。
「石川?どうかしたのか?」
 頭上から慣れ親しんだ温かい声が掛けられ、ポンッと頭に手が乗せられる。
 驚いて見上げた先に西脇の顔があった。
 どうやら、自分の考えに没頭していて、彼が来た事に気付かなかった様だ。
「石川?」
 唯ジッと見ていたからだろうか、西脇が心配そうに顔を歪める。
「あ、ああ。ゴメン…ちょっと驚いて」
 やっと声を発した石川に安心したのだろう。西脇が優しく頭を撫でた。
「悪い、遅くなった。宇崎達ももう直ぐ来るから」
「うん」
 どうやら西脇には全てお見通しの様だ。やはりこいつには敵わない。
 優しい声と心地良い感触に身を任す。
 冷えた心が元に戻るまで――。



 何時からだろう
 ひとりが怖くなったのは
 ――ひとりが怖い事を知ってしまったのは
 知らなかった時にはもう戻れない


 だから


 俺はもう
 お前を
 皆を

 手放す事など出来はしない…――