カイロ




「う〜、さぶっ」
「お帰り、西脇」
 体を震わせながら、外回りから帰ってきた西脇を石川が出迎える。
 冬が近くなるにつれ、外の寒さは日に日に増してくる。外警の人間にとってこの
時季の仕事はとても辛い。寒さが苦手な西脇にとっては尚更だ。
「西脇、大丈夫か?暖房の温度もう少し上げるか?」
 寒そうな西脇を心配して、石川が温度を上げようとする。
「いや、大丈夫。これ以上温度を上げると石川の方が暑いだろ」
「でも…」
「それよりこっちに来てくれないか?」
 西脇がベッドをポンポンと叩く。
 訳が分からないままそこに座ると、西脇が腕を回してきた。
「西脇…?」
「やっぱり、こっちの方が暖かい」
 抱き締めてくる西脇の体はまだ少し冷たくて。
「しょうがないな…まったく」
 そう言って、石川は静かに西脇に寄り添った。


拍手御礼ss再録.